台北の夜市を歩いていると、景色というものは建物や看板だけではないのだと思う。
屋台から立ちのぼる湯気、鉄板の音、果物の甘い匂い、揚げ物の香ばしさ、人の声、スクーターの気配。そういうものが全部混ざって、夜の街全体がひとつの風景になっている。
台湾の夜市は、観光地でありながら、どこか生活の延長にも見える。食べ歩きをする旅行者の横で、地元の人がいつものように夕食を買っていく。看板の明かりは派手なのに、流れている時間は意外と日常的で、その差がなんだか心地いい。
小籠包、胡椒餅、鶏排、タピオカ、果物のジュース。何を食べるか決めずに歩いても、匂いの方から勝手に誘ってくる。目的地としての夜市というより、歩いているうちに気分ができあがっていく場所なのかもしれない。
初めて台湾に行くなら、有名な観光地を巡るのもいいけれど、夜市をただ歩くだけでもかなり台湾らしさを感じられると思う。少し蒸し暑い空気、人の多さ、明るすぎる屋台の光。その全部が、台北の夜の記憶として残る。

Photo by Vernon Raineil Cenzon on Unsplash
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